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血について  第47話

2022.12.27

 本日のお題は、血についてです。東洋医学では、「ち」ではなく「けつ」と読みます。

 そして、東洋医学では血は目に見えるものであり、血脈中を流れて身体に栄養を与え、五臓六腑を養っていると考えています。また、全身を潤す滋潤作用があるとされています。

 血が足りない、つまり全身の機能が衰え、栄養がいきわたらず元気のない状態を「血虚」と言い、血が循環せずどこかに滞ったり末端まで行き渡らない状態を「瘀血」と呼んでいます。

 血の異常による症状は、以下の様な物が挙げられます

 1)脳内循環不全によると思われる諸症状

   健忘、精神異常、感情失調、自律神経失調症状、のぼせ、頭痛、頭重感、めまい、肩こりなど

 2)末梢血液の低下または充血による症状

   手足の冷えやほてり

 3)皮膚や粘膜の変化

   唇の紫色、暗赤色、歯茎の紫黒色、皮膚の斑点や色素沈着、皮膚の知覚症状、乾燥したかさかさの皮膚、サメ肌、フケ状にめくれる皮膚、舌の紫色、舌の裏の静脈怒張、皮膚の毛細血管の拡張、皮膚の静脈拡張、発疹など

 4)腹部の変化

   へそ周辺や下腹部に圧したときの抵抗やしこりがある。子宮筋腫、卵巣嚢腫、子宮内膜症、虫垂炎などによる腹部の筋肉の凝りや腫瘍

 5)女性生殖器に関するホルモン失調や自律神経失調症状状態

   月経異常、産後の不調、不妊症、更年期障害、性器出血など

 6)出血傾向

 7)筋肉の痙攣や麻痺、萎縮

などの症状が挙げられます。

それでは、瘀血に使用する薬物及び薬方はどの様なものがあるでしょう。

ほんの一部ですが、紹介してみたいと思います。

 ・桃仁  薬味:苦 薬性:平 バラ科モモの成熟した種子を乾燥した物。

 ・牡丹皮 薬味:苦、辛 薬性:微寒 ボタン科ボタンの根の皮を乾燥させたもの。

 ・紅花 薬味:辛 薬性:温 キク科ベニバナの花を乾燥させた物。

 ・川芎 薬味:辛 薬性:温 セリ科センキュウの根茎

などの生薬があります。

 薬方では、

  通導散、桃核承気湯、桃仁承気湯(←大黄、芒硝などの通じ薬含む)、桂枝茯苓丸、芎帰調血飲及び芎帰調血飲第一加減など(←通じ薬含まない)があります。使い分けとしては、大黄や芒硝などの通じ薬を含んだものの方が作用が強いので、その点が処方の選択のポイントとなります。また、これらの強い薬は打撲捻挫などにも応用されます。

 山本巌先生は、瘀血とは何かの問いに対して、「それは駆瘀血剤というものを使用して良くなる様な症候群である」と仰っていました。私の様な浅学者には深すぎる名言です。

 次に、血虚に使用する薬物と薬方はどの様なものがあるでしょう。

こちらも、ほんの一部ですが紹介しましょう

 ・地黄 薬味:甘、苦 薬性:寒 ゴマノハグサ科のアカヤジオウの根。そのまま乾燥させた物を乾地黄。一度蒸してから乾燥させた物を熟地黄(甘、微温)と言う。

 ・当帰 薬味:甘、辛 薬性:温 セリ科のトウキの根を湯通ししてから乾燥した物。血を補い巡らせる働きもある。葉をもんだりするとセロリの香りがすると言う人もいる。

 ・阿膠 薬味:甘、薬性:平 ウマ科ロバの皮を、毛を取り除いてから煮て膠にしたもの

また、血と水は陰に属し、補陰薬と言われるグループの薬物も存在する

 ・麦門冬 薬味:甘・微苦 薬性:微寒 ユリ科ジャノヒゲの塊根を言う。

 ・枸杞子 薬味:甘、薬性:平 ナス科クコの果実。ちなみに葉は枸杞葉、根の皮を地骨皮と言う。

 そして、血虚に使用する代表的な薬方に四物湯があります。

四物湯は、

  当帰、芍薬、川芎、地黄の四味からなりますが、これもまたベースになる薬方です。

 ・+黄連解毒湯(黄連、黄芩、黄柏、山梔子)=温清飲

 ・+艾葉、阿膠、甘草=芎帰膠艾湯(不正出血、切迫流産などに)

 ・ー地黄+沢瀉、茯苓、白朮=当帰芍薬散

 ・ー地黄+呉茱萸、人参、桂皮、阿膠、牡丹皮、生姜、甘草、半夏、麦門冬=温経湯(腹壁軟弱、冷え症、唇が乾燥して皮がめくれる様な症状に)

 ・+茯苓、桂枝、白朮、甘草(苓桂朮甘湯)=連珠飲(冷えのぼせがあり発汗もある)

という様に、四物湯単体ではあまり使用されませんが、色々な薬物や薬方と組み合わせて用いるケースが多いです。

 本日の写真は、山本巌先生から細野史郎へ贈られた東医雑録(1)の見開きページより。

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