めまいは眩暈とも言いますが、漢方では回転性の激しいめまいを眩。身体性遊感や動揺感などの軽いめまいや立ちくらみを暈と言います。もちろん、眩と暈では、処方の選択が変わってきます。そのあたりの事を紹介しましょう。

　元の時代の書物である朱丹渓法には、「痰ナクハ眩ヲナサズ」とあり、異常な水分の貯留や停滞すなわち水毒いは、めまいの最大の原因の一つと考えられている。水毒があると、頭重感、心窩部が痞えて重苦しく、悪心嘔吐、四肢や全身の重苦しい感じに加えて、回転性のめまいが見られることがある。したがって、水毒による漢方治療の原則は、利水薬を用いることにある。

　回転性のめまいにおいて著効を示すのは、一にも二にも沢瀉湯と言う薬方が挙げられます。薬味は、沢瀉と白朮の二味だけ。薬味が少ないほど、効き目が早いことは周知の事であると思います。こむら返りの芍薬甘草湯然り、通じ薬の大黄甘草湯然りである。昔の金匱要略という書物には、「心下に支飲ありて、其人冒眩に苦しむは、沢瀉湯之を主る」、つまり鳩尾に痰飲や水気があって、めまいに苦しむ人には沢瀉湯！と言う意味があります。沢瀉と白朮はともに水を捌く作用があり、薬味が少ないことも相まって回転性のめまいの第一選択肢になり得ます。

　回転性のめまいのもう一つの候補は、五苓散もいいと思います。低気圧が近づく前の頭痛で有名になってしまいましたが、やはり痰飲や水毒に対応する薬方。二日酔いに良いなんて話もあり、水一般において使いやすいです。中身は、茯苓末、白朮末、沢瀉末、豬苓末、桂枝末となっており、桂枝末以外は利水薬で固められています。

　次に、軽いめまいや立ちくらみでは、どの様な薬方が候補に上がるでしょう？

　まず、前回のフクロウ型で紹介した苓桂朮甘湯が使えます。急に立ち上がったりすると、立ちくらみの他に目が真っ暗になったり、耳鳴りがしたり脳貧血の症状を表す。それと同時に、心悸亢進を強く感じる。やはり、漢方の古典の金匱要略には、「心下に痰飲ありて胸脇支滿し、目眩するは苓桂朮甘湯之を主る」とあり、鳩尾に痰飲や水の存在によるめまいについて指摘しています。

　真武湯は、白朮と茯苓と言う利水剤。附子と生姜と言う散寒剤に鎮痛鎮痙の芍薬と言う組み合わせです。病態は、冷えて水回りが悪いと言うことで老人や虚弱者に向いていると言えそうです。

　半夏白朮天麻湯は、一言で言えば消化機能の弱い者の痰飲によるめまい、頭痛に効果があります。痰飲の基本処方である二陳湯を基本骨格に、消化機能を改善する六君子湯、眩暈と頭痛に作用する天麻と沢瀉、温裏の乾姜、健胃作用の黄柏と言った構成です。やはり、沢瀉はポイントで胃の弱い人の回転性のめまいに対して有効です。

　また、釣藤散も二陳湯を基本骨格に持つので、痰飲が背景にあるが、癇癪持ちの人がイライラしたりしてめまいや血圧上昇、頭痛を伴う場合によく用いられます。

　以上のように、痰飲や水毒を背景としためまいに使用する薬方を紹介しました。素人判断では、なかなか難しい部分があるので、漢方相談薬局や漢方の専門のお医者さんにアドバイスや指示をもらって下さい。

　本日の写真は、当薬局初の薬膳茶です。「湿気取り茶」と言う名前にしてみました。今が旬です！一個から販売（２１０円）。五個セットで1,000円にて。中身は、焙じたとうもろこしとハトムギ。とうもろこしが早くも無くなったので、次のロットからとうもろこしの髭（南蛮毛）になります。ラベルまだ作ってません。