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自身のカルテから 第17話

2022.11.11

本日のお題は、細野診療所を整理していた時に発見した自身のカルテから興味深かったものを取り上げようと思う(また、解読出来れば順次公開する予定)

自分の生年月日は、昭和41年2月9日で初診は3月とある(日付の記載なし)。字から見て、父の字であろうと思われる。まず、表紙には生後3日間とあり湿疹とドイツ語で書かれている。乳児湿疹であろうか?

ページをめくると、Rp1) 十敗 とある。細野流では、十味敗毒散を十敗と略すので、もうその頃からそのような習慣があったという事だ。経過として、「少なくなった時もあれば多くなった時もある」との記載。十敗が何日分との記載なし。

3/14に聴き慣れない薬方名が登場する。馬明湯である。

 馬明湯加忍冬連翹 (馬明湯に忍冬と連翹を加味)

馬明退、鬱金、紅花、石膏、甘草、忍冬、連翹 とある。

馬明退について、本をいろいろ探しても見つからず、ネットで発見した。なんと、カイコの抜け殻であった。帰宅後、米田該典先生監修「漢方のくすりの辞典」にて「先天性梅毒などの胎毒の治療に紅花・大黄などと配合する」とあった。

また、馬明湯に関しても手掛かりがなかったが、浅田宗伯の勿誤薬室方函口決にて、短く

   治、胎毒   とあった。

この馬明湯の出典を見ると、本朝経験方つまり日本生まれの薬方である。通りで、馬明退は本草書に無いはずです。

ちなみに、カイコと言えば白殭蚕(カイコの幼虫が白殭箘に感染して死んだもの;鳥薬順気散などに配合)を知っていたが、流石に馬明退は知らなかった。

次に、年が明けて昭和42年1月11日に、目イボか何かで荊防排毒散その後葛根湯加川芎辛夷を投与されている。

予後が良くないのか、1月17日にまた聴き慣れない生薬が登場する。十敗加露蜂房の露蜂房である。実際には、何度か耳にした事があるが調べてみると日本ではスズメバチの巣という事であった。西荻医談(細野史郎が東京に診察で訪れた時に、大塚敬節先生と意見交換していた内容をまとめた書物)によると、

  1)止痛に効くし、化膿を部分的に集めて排膿せしむ。疔瘍、歯肉炎などにもっともよく効く。粉末として1.5から4.0gを用いる。膀胱結核に用いても尿がきれいになり、痛みが止まる事がある。

  2)3分か5分毎に小便に行くと言う腎臓結核に与えたところ、排尿障害、頻尿にも具合が良いが大変よく行けるといった。露蜂房は緩下作用があるのではないだろうか

とあった。

 この様に、全く汎用性の無い薬方や生薬を駆使して我が子の病を治そうとしていたの(見方を変えれれば、良い実験材料か。。。。)が伝わるし感慨深いものがある。

本日のサムネイル画像は、雲南トリカブトである。(先日のトリカブトは、済州島姫トリカブト)今まで、毎年の様にトリカブトの苗を購入しているが、夏を初めて越したのである。それが今咲いている。しかも、ほどんど何も世話をしていないにも関わらず。

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