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思い入れのある薬方 その3 第16話

2022.11.09

思い入れのある薬方その3という事で、こちらも幼少時代からとてもお世話になっていた。夏は過ぎ去ったが、清暑益気湯の話。清暑益気湯は、注夏病つまり夏バテや夏マケに使用される。

一般的に、清暑益気湯は2種類あるが細野史郎が創設した家方清暑益気湯(通称B清)が存在していた。もちろん私は、夏に極端に食欲減退し元気も無くなるという事で、梅雨から夏にかけて常用していた。そちらの方は、後回しにして、まず二つの清暑益気湯を紹介してみようと思う。

一つ目は、近清清暑益気湯である。処方構成は、

   黄耆、陳皮、白朮、当帰、甘草、黄柏、人参、麦門冬、五味子 の9味からなる

二つ目は、内外傷弁惑論の内外清暑益気湯である。こちらの処方構成は、

  黄耆、陳皮、白朮、当帰、甘草、黄柏、人参、麦門冬、五味子、升麻、葛根、神麴、沢瀉、青皮、

蒼朮、  の15味である。

 つまり、黄芪から五味子までは共通で、神麴から葛根まで加味してある事がわかる。つまりこれはどういう事かと言うと、薬味が少ない方が急性期的に使用し、薬味が多い方が慢性期的に使用されると言うことの証明に他ならない。現に、神麴という消化剤を内外清暑益気湯を加えているが、夏マケが消化器症状まで波及している状態に対処しているのである。という事で、近製清暑益気湯は急性期に、内外清暑益気湯は慢性的になった時期に使用される。ちなみに、医療用の清暑益気湯は9味の清暑益気湯の方である。

しかしである、細野史郎の著書である「細野史郎著作・座談集」には、東京方面の定評では、近製清暑益気湯は効かない、それは15味の方を使わないからであると書いてあります。ということは、現在の医療用の清暑益気湯は効いてないのかもですね。

細野史郎の考えだした清暑益気湯の処方構成を下に記します。

   

  黄耆、陳皮、白朮、当帰、甘草、黄柏、人参、麦門冬、五味子、檳榔子、升麻、葛根、呉茱萸、木瓜  の14味からなる。

内外清暑益気湯との大きな違いは、檳榔子と呉茱萸と木瓜なる無しである。これらの薬物が入っていると九味檳榔湯の方意を含むことになる。つまり、腫れぼったかったり足がだるかったりの水毒症状が見られる。夏は、水分をがぶ飲みするので、体内に貯留するケースも多く、これらの薬物が加味してあるのは真っ当なことだといえよう。

ちなみに、細野の処方には当初ビタミンB1やB2が加えられていたので、清暑益気湯をB清と呼んでいたようである。

本日のサムネイルは、祖父の細野史郎と幼少の私。1969年の写真である。

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