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おけらについて  第48話

2022.12.28

 京都の八坂神社では、大晦日から元旦にかけておけら詣りが行われます。おけら詣りはおけらを燃やして邪気を払う伝統行事で、参拝者は持ち帰った火で雑煮を炊いたり、神棚をともしたりすると1年の無病息災がかなうと伝わり、現在は火が消えた後の縄をお守りとして台所に飾ることが一般的という。(京都新聞の記事より)と言うのは、おけらには邪気を払う力があるとされたので、おけら詣りに使用されたのでしょう。

 という事で、本日はおけらの話です。おけらは、漢方では二種類用いられ、蒼朮と白朮がありそれぞれ植物が異なり、薬効薬能も少し異なって来ます。元々は、蒼朮と白朮は朮として一括りにされていましたが、6世紀ごろに蒼朮と白朮に分けられたと言われています。

 蒼朮の基原植物は、キク科ホソバオケラで根茎を蒼朮として用います。それに対して白朮の基原植物は、オオバナオケラあるいはオケラの根茎を用います。花の形は非常に似ていますが、生薬の形や芳香が異なります。蒼朮は、スッキリとした刺激的な芳香。白朮は、どこか甘い芳香が特徴的です。そして、蒼朮はヒネソールやβーオイデスモールと言う成分を含有し、良品になるとこれらの結晶が断面から白い綿が析出しているのが確認できます。この結晶は、なぜか冬場に発生することが多いのを筆者は経験しています。また、これらの結晶はカビと似ているので間違えられることも多く、生薬を扱うのに慣れていない薬剤師さんは知っておくべきでしょう。

 薬効薬能の話に参ります。蒼朮の薬味は、苦・辛で、薬性は温となります。それに対して白朮の薬味は、甘・微苦で、薬性は温となります。蒼朮が辛で、白朮が甘であることが大問題で、薬味の辛は発散を意味します。つまり、痛みを散らす働きがあります。白朮は甘ですから補う働きがあります。そのあたり、配合される薬方にも違いがあり蒼朮は疎経活血湯や五積散など鎮痛を目的とした処方に、白朮は四君子湯や補中益気湯、人参湯など気を補ったりする処方に用いられます。

 その他、共通する薬能として湿を除く作用に優れますが、白朮は胃腸の湿を除いて健胃や滋養に作用するのに対して、蒼朮は胃腸の湿だけでなく体表の湿を除いて関節の主張や疼痛を改善するとされています。

 また、お正月の屠蘇散にも配合され、邪気払いとして一躍買っています。

 本日の写真はリピートとなります。自宅に植えているホソバオケラです。家人が、雑草と間違えたか意図的にか不明ですが、一度引っこ抜かれたと言う暗い過去があります。気付いて即座に植え直して事なきを得ましたが。花期は、9月下旬から10月上旬にかけて。花に芳香はほとんどありません。

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