漢方薬の原料である生薬は、ほとんどが植物由来であるが、ごく稀に鉱物や動物を使用することもある。鉱物は、以前紹介した芒硝や石膏などがある。動物は、麝香や牛黄に代表される非常に高価なものが多いが、今日紹介する阿膠も年々価格が上昇し、頭が痛いところだ。
阿膠は、ロバや牛の皮を、毛を取り除いてから煮て膠にしたものを言います。膠(にかわ)とは煮皮のことで、粗製のゼラチンのことです。(余談ですが、漢方の古典傷寒論には、猪膚湯という処方がありこれは豚の皮を煮出したもので、「少陰病で、咽痛・下痢・胸痛・胸苦しさをおぼえる時に猪膚湯がよい」とあります)
産地は、中国はもちろん日本でも生産されますが、すぐれた品質のものは中国の山東省で精製されたものです。通称、山東阿膠と称される。日本では、主として牛の骨や皮から取る局方のゼラチンが用いられます。
ゼラチンは、ゼリーなどのお菓子作りには欠かせないものです。ゼラチンを溶かし砂糖、香料、果汁などを入れて固めたのはゼリーであるのはご存じの通りと思います。
薬理的には(実験室レベルでは)、血液凝固の促進、カルシウム代謝の改善作用のほか、貧血の犬の胃内に阿膠溶液を投与すると赤血球、ヘモグロビンの増加速度が早まることが知られています。
効能は、止血・補血・補陰などの作用があります。
止血作用は、喀血・吐血・血尿・血便・不性器出血など様々な出血症状に用いられます。不性器出血の代表的な処方に芎帰膠艾湯、血尿の代表的な処方に猪苓湯があげられ、それぞれに配合されています。
補血作用は、漢方で言うところの全身の栄養を補うとされ、顔色がさえない、めまい、動悸、息切れ、乾燥状態などの貧血様症状に用いられる。炙甘草湯や温経湯は補血を目的として配合したものです。
補陰作用とは、体内の血や水の不足による熱症状。それに伴う咳や不眠を寛解することをいいます。つまり、阿膠は血や水(陰)を補うことにより体内での陽とのバランスを保っている。黄連阿膠湯という処方は補陰作用を目的として阿膠が配合されています。
本日の写真は、年末のウォーキングから。産寧坂です。この辺りは、京都らしくて良いですね。京都に住んでいながらこれまで2回ぐらいしか行ったことがなく、どうせならと人のいない早朝めがけて行きました。