風邪を引いた時に、ゴホゴホした咳が出たり、黄緑の痰が出たりする事があります。いわゆる湿性の咳と言われる咳です。黄緑の痰は、粘度が高く切れにくいのが特徴です。
そのような時に使用する薬は多種類あります。それらの薬のキーワードは二陳湯(半夏・陳皮・生姜・茯苓・甘草)である。と言うよりも、全部の生薬が含まれていると言うのではなく、この中のいくつかが組み合わされているケースが多い。その中でも、半夏と陳皮は重要で燥湿化痰薬と言われる。つまり、乾かす作用があり痰を解消する働きがある。(この場合の痰とは津液の代謝の失調により発生した病理産物で、粘稠なものを指す。風邪の時の痰もその中に含まれる)結局、病態的に黄緑の痰が出る時期は、湿が溜まっていると言える。湿邪は、脾胃を侵しやすく、消化器症状(食欲不振・腹満・軟便など)が現れる。そうなんです、胃腸が弱っているのですね。ですから、風邪をこじらせたらお酒を控えめに暴飲暴食を慎むべきなんです。
まず、食生活を大事にする事が第一ですが、薬はどの様なものがあるでしょう。浅田流漢方で使用する薬の中から紹介してみます。
まずは、柴胡枳桔湯です(細野史郎は、柴胡枳桔湯に麦門冬・桑白皮・石膏・黄連・紫蘇子を加味しています)
浅田宗伯の勿誤薬室方函口訣には、
治小結胸、脈弦数、口苦、心下硬痛、或胸中満硬、或脇下満硬、或発熱或日晡潮熱或往来肝熱、耳聾、目眩
とあり、みぞおち・胸のあたりや脇下が張って痛むとあります。その他、少陽病期に特徴的な文句が並びます。この処方は、二陳湯中の甘草と半夏と生姜を含みます。
次に、柴梗半夏湯です。
浅田宗伯の勿誤薬室方函口訣には、
治発熱、咳嗽、胸満、両脇刺痛者、此邪熱挟痰攻注也
とあり、咳をした時に両脇が刺す様に痛むと書いてあります。
この処方は、柴胡枳桔湯に青皮杏仁を加味したものです。この処方は、二陳湯の甘草と半夏と生姜と青皮(陳皮と同じ基原植物で、陳皮よりも若いものを指す)を含みます。
次に、柴陥湯です。この処方は、小柴胡湯と小陥胸湯の合方でみぞおちの辺りで硬く結ばれて押さえると痛みがある場合に使います。この処方は、二陳湯中の半夏と生姜と甘草を含む。
いずれにせよ、これら3つの処方はみぞおちやら胸部やら脇腹に痛みがあり、咳をすると特にその部分が痛む場合に用います。まとめますと、柴胡枳桔湯は、咳した時にみぞおちから胸部や脇下にかけて痛む者、柴梗半夏湯は両脇が刺すように痛む者、柴陥湯はみぞおちが痛む者に使用すると、浅田宗伯は方函口訣の中で述べています。しかし、実際にはこれら3つの処方の使い分けは非常に難しいのが現状です。正直な所、風邪気味な時は暴飲暴食を避けるなどの生活習慣を見直す事が先決でしょう。