1月も中旬を過ぎ2月が目の前に来ようとしています。と同時にスギ花粉が飛び始めますね。運良く自分は、花粉症には至っていないのですが、側から見ているだけで辛さは理解出来ます。2回シリーズとして、花粉症の漢方治療として書いてみようと思います。
まず、1回目は冷えが背景にある場合の漢方治療です。ほとんど多数の方はこちらのタイプかと思われますが。
冷えが背景にある場合は、どの様な症状でしょう?薄い色の尿が多量に出るとか生唾が多いとか顔面が青白いとか色々とサインがあるのですが、1番の決め手は鼻汁がサラサラしている。そして無色透明でクシャミを伴う事が多い事に気付くでしょう。
クシャミや水洟が多いと言うことは、体の中に水分が過剰に偏在していると言う事になります。したがって、その辺りの食養生も重要になってくる訳です。つまり、冷たい飲食を控えなければなりません。食養生で気を付けながら漢方薬と言う事になります。
漢方薬でまず第一選択肢に上がるのは小青竜湯です。
いつもの様に小青竜湯の条文を召喚論から紹介しましょう。
傷寒、心下有水気、欬而微喘、発熱不渇、小青竜湯主之。
つまり、みぞおちに水分があって咳がありわずかにゼイゼイして喉の渇きを訴えない場合は、小青竜湯が良いですよと言うことが書いてあります。
「みぞおちに水分がある」と「喉の渇きを訴えない」がポイントで、水分が過剰に存在すると言うことと、喉の渇きがないということは熱による影響が見られないという事になります。
次に、小青竜湯の中身を見て行きましょう
麻黄、桂枝、甘草、乾姜、五味子、芍薬、細辛、半夏
の8味ですが、ここの肝は甘草と乾姜のコンビであると思います。甘草と乾姜の組み合わせは、裏寒に対する基本的な骨格であり、裏位(消化器系含め内臓系)を温める作用があります。ここまで言えばなんとなく分かりますね。薄い水洟やクシャミ連発は、体の中の方が冷えているのです。そして、もう一つのポイントは五味子と芍薬にあります。五味子と芍薬は収斂作用があり、体内から出て行く水洟を収める働きがあるのです。
しかし、小青竜湯単体では効かないケースも多々あると思います。咳を伴う場合は杏仁を加味して小青竜湯加杏仁したり、喘息様の咳を伴う様であれば杏仁石膏あるいは石膏のみを加味して小青竜湯加杏仁石膏あるいは小青竜湯加石膏と言う形にします。
そして、もう一つこれらでも効かないと言うケースもあります。もちろん食養生を施した上でです。その様な場合は、附子(トリカブトの塊根)を加味します。小青竜湯加附子と言う形にします。あるいは、麻黄細辛附子湯と言うこれまた体の芯から冷えて困ると言った病態に使われます。そして、麻黄と細辛で水捌けをよくし、附子で冷えを去ります。ただ、薬味が麻黄と細辛と附子だけと言う非常にシンプルな中身なので効き目もシャープですが、合わない人に使うと麻黄の副作用で心悸亢進を来したり食欲不振が見られたりします。麻黄細辛附子湯は、陰病の薬方で老人が風邪を引いた時や喉チクの薬として知られています。合えば、小青竜湯よりも効くとは思いますが、服用には注意が必要です。
あと、麻黄が使えない方も沢山おられます。元々、胃が良くない方ですね。その様な場合は、苓甘姜味辛夏仁湯を用います。薬味は以下の通りです。
茯苓、甘草、乾姜、五味子、細辛、半夏、杏仁 の6味です
つまり、小青竜湯から麻黄と細辛、芍薬を去り水を捌く茯苓と咳止めの杏仁を加味すれば苓甘姜味辛夏仁湯になります。体を温めながら水を捌くと言う小青竜湯と麻黄細辛附子湯の作用と似通った構成となります。
と言うわけで、薄い水洟とクシャミ連発の花粉症の場合、水を捌いて体を内外含めて冷やさない事が肝心であり、食生活含め実生活において程々に気を付けなければなりません。
本日の写真は、手作りパンチェッタです。豚バラ肉ブロックに10%の塩を塗し冷蔵庫にて放置。脱水させます。その際、クッキングシートが濡れてきたら取り替え、10日余り。そのまま焼いてもいいし、スープに入れてもいいし、パスタに入れても良いですね。出来上がったら水の中に15分ほど浸して脱塩をお忘れなく。