そろそろ、ホットワインが恋しくなってくる季節。冬の到来が近づいて来ました。ホットワインに欠かせない丁子に関して取り上げてみました。(個人的には、ホットウィスキーに一つ二つ浮かべて飲むのも乙だと思います)
チョウジはチョウジノキの蕾のことを指し、丁香とも言われます。チョウジノキはフトモモ科の常緑の小高木で樹高数メートルほどです。日本では、栽培されているのはほとんど見られず、まれに薬用植物園の温室で見られる程度です。しかも、蕾をつける個体も珍しいようです。
蕾が緑から紅色になる頃に採集し、乾燥させると暗褐色から暗赤褐色になり、生薬の丁字となる。その形が漢字の丁の字に似ており、強い芳香があることから丁字または丁香と呼ばれています。
チョウジノキはインドネシアのモルッカ諸島が原産で、香辛料や薬用としてマレー半島のペナン島やアフリカ東海岸のサンジバル、マダカスカル島やインドネシアなどでも栽培されています。
丁字の歴史は日本では古く、奈良時代には伝わっていました。ヨーロッパでは4世紀頃に地中海地方で知られていました。。中国では漢代と言う説や宋代という説があり詳細は不明のようです。
一般的には、香辛料や香料として用いられるのはよく知られているとおりです。クローブ(フランス語では釘を意味する)はまさにチョウジノキの蕾のことであり、肉料理や紅茶あるいは焼き菓子に加えるなど用途は多いのは周知の通りでしょう。ただ、かなり刺激的な香気が強いので控えめに使用するのが肝心だと思います。
また、スパイスカレーにももちろんよく使用します。その時は、シナモン(セイロンではなくカッシア)とカルダモンと八角と共によく使用します。北インドのカレーを作るときに、まず油にこれらのスパイスの香りを移してから調理します(テンパリングという)
丁字の薬性は温で、温める作用があることをさします。つまり、お腹を温め、嘔吐やしゃっくりを止める作用があります。実は、夏に聖光園でお出ししている和中飲にも配合されています。夏になぜ温める物が入っているのかと思われましょうが、冷房や冷たい物の飲み過ぎで冷えた胃腸を温めるのが目的ではないかと推測できます。
成分は、精油(丁字油)、オイゲノールやアセチルオイゲノールなどを含みます。丁字油は香料の他、防腐、抗菌に使用されます。
漢方では、柿蔕湯というしゃっくりを止める処方に配合されています。その他、治打撲一方という打撲や捻挫の時に服用する処方にも配合されています。薬味は辛で、(つまり味は辛く発散する作用があり)あることから、患部の痛みや熱を発散するのが目的で配合されていると考えられます。
写真は、グローブの花です。鼻を近づけても香りはしませんでした。星薬科大学薬草園の温室にて。(2015年6月25日撮影)